ジョジョの中には、一般的に認識されていることと事実が異なることがあります。今回は、そんな誤解されがちなことをまとめてみました。
第1部
ジョナサンの名前の元ネタはファミレス
「ジョナサン・ジョースターの名前は荒木先生が打ち合わせをしたファミレスの名前が由来」という誤解。確かに、荒木先生がこのお話をされているインタビューも存在するんですが、のちのインタビューで否定されています。
――ジョナサン・ジョースターの名前は「ファミレスのジョナサンで打ち合わせをしたからジョナサン・ジョースター」なんですよね。
荒木 え、ジョナサン?(笑)
椛島 名前を「ジョジョ」にしたかったんでしょ?
荒木 頭文字がJ・Jとか、S・Sとか、韻を踏みたかったんですよ。スティーブン・スピルバーグみたいに。でも『ジョジョ』の打ち合わせを最初にやったファミレスはデニーズですよ。ジョナサンに行くようになったのは、そのあとなんで。
――いやいや、先生どこかで言ってますよ(笑)。「ジョナサンだったから」って。
荒木 ああ、それは「そーゆーことにしておくか」みたいな感じ?(笑)
椛島 話は面白い方がいいよね(笑)。荒木さんは伝説好きだよね。事実よりも面白いほうがいいだろうっていう。それが根底にあるんだよね。
荒木 伝説はホラーの条件ですから。
――じゃあ「ジョナサン」という名前は...。
荒木 J・Jって韻を踏んだっていう、ただそれだけ。特にどこかから引っ張ってきたわけではないです。
「JOJOVELLER」「荒木飛呂彦×椛島良介」より
第3部
ザ・ワールドは最初全てのスタンドが使える能力だった
DIOが最初ハーミットパープルのようなスタンドを使って念写していたことや、スタンド名が「世界21」であることから広まった噂で、「ザ・ワールドは最初全てのスタンドが使える能力という設定だった」というもの。
実際は、「スタープラチナの超スピードに時を止めて対抗する」と、初期に対比してデザインされているため、最初から時間を止める能力でした。ハーミットパープルのようなスタンドは「ジョナサンの体のスタンド」と説明されています。
色味などが星の白金(スタープラチナ)と対になるように、初期にボスとしてデザインしたスタンドですね。星の白金の超スピードに対して、時を止めて対抗してくるという、同質の能力者対決です。
「JOJOVELLER」より 荒木先生のザ・ワールドへのコメント
第4部
仗助を助けた不良は未来の仗助
「仗助の回想で登場する車を押してくれた青年が、実は未来の仗助本人」という誤解。見た目が似ていることや第3の爆弾が時間を戻すことから、「仗助が昔に戻って過去の自分を助けるという展開が予定されていたのではないか」という噂が広がりました。
実際は「伏線ではなく仗助の思い出」と説明されています。
北久保「4部ってかなり長い構成なんでしょ?」
荒 木「いや、全然構成とかしていないんですけど」
北久保「ちらっとフリが有ったじゃないですか。仗助が過去の自分に会うとか」
荒 木「ああ、あれは関係ないです」
北久保「関係ない!?」
荒 木「あれはただの仗助の思い出ですよ」
3部OVA 荒木先生と北久保監督の対談より
シンデレラは吉良が顔を変えるシナリオのために作られた
追い詰められた吉良は、辻彩のスタンド、シンデレラを使って顔を変えて逃走します。このシンデレラが初登場したエピソードが、原作では「重ちー死亡(吉良初登場)」と「シアーハートアタック戦(吉良が川尻に成り代わる)」に挟まれていることから、「シンデレラは吉良が顔を変えるために作られたんだな」という認識をされている方も多いかと思います。
しかし実際は、吉良がシンデレラで顔を変えるシナリオは直前で考えられたものです。
シンデレラを利用して入れ替わるというのは、全然考えてなかったんですよ。
仗助たちに追い詰められて、どうやって逃げ延びさせようかと必死に考えて「あ、そういえば前回出したシンデレラが使えるじゃないか!」って思いついた。
基本的にはいつも、週間単位で考えていますから、その先のことはいつも考えていません。
「集英社ジャンプリミックス ジョジョの奇妙な冒険 PARTⅣ ダイヤモンドは砕けない VOL.27 吉良吉影の新しい事情編③」より 荒木先生のインタビュー
第5部
フーゴが途中退場させられた理由は強すぎたから
チームメンバーの一人フーゴは途中で退場となりますが、その理由が「彼のスタンド、パープル・ヘイズが強すぎたから」という誤解。実際の理由は、「フーゴが途中で裏切る展開を構想していたが、あまりに暗い展開になるので描けなかったから」というものです。ただ、のちに敵になるからこそスタンドがあそこまで強かったと思うので、「強すぎて退場させられた」はあながち間違いではなさそうです。
この第5部『黄金の風』では、どうしてもカットせざるを得ない部分があって――というより、どうしても描く事ができないエピソードがありました。
それは、ミスタ、ナランチャ、フーゴ、アバッキオの4人の中の誰かが、実はボスのスパイで、ジョルノとブチャラティを「裏切る」という設定でした。感覚の中ではたぶん、フーゴが「裏切り者」なんだろうなと思って描こうとしたら、これがどーしても描く事が出来ませんでした。
あの時の暗い気分がますます暗い話になっていきそうだし、実際「嫌ー」な気持ちがぼくの心の中に芽ばえてきて、ブチャラティとかの気持ちを考えると、本当に気の毒で、気の毒で。信頼していた仲間が裏切るなんて、ぼくの概念にはなくて、生理的に嫌な気分になりました。「作者としての勇気がたりないぞー」と叱られればそれまでなのですが、本当、絶対描くのは嫌だ、と思ってしまったのです。しかもケジメをつけるために、たぶんジョルノがフーゴの処刑に行くようなエピソードになったでしょうね。絶対に少年少女読者をヤバイ気分にさせると思い込んでしまったのです。
そういう理由で、ヴェネツィア大運河のサン・ジョルジョ・マッジョーレの船着き場での、別れのシーンです。フーゴに消えてもらったのです。
文庫版「ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風」より 荒木先生のインタビュー
レクイエム化は単純進化
矢でスタンドを貫くことで起きる「レクイエム化」。「もしこのスタンドがレクイエム化したら」という想像をする際、能力が単純に進化すると考えている人もいますが、実際は「精神(魂)を支配する能力になる」と決まっています。
もしこの「矢」を力のある者が使えば...!!
その者は全ての生き物の精神を支配する力を持つことになるッ!
「ジョジョの奇妙な冒険」62巻より ジャン=ピエール・ポルナレフのセリフ
『レクイエム』とは『生物の魂』を支配するエネルギーのことである。
「ジョジョの奇妙な冒険」62巻より レクイエムの能力解説