もしもジョジョのスタンドがひとつだけ使えるとしたら ~「欲しいスタンド論争」に決着をつけるブログ~

もしもジョジョのスタンドがひとつだけ使えるとしたら、どのスタンドを選ぶのが良いか、を多方面から考察するブログです。

The JOJOLands(ジョジョランズ) 16話 「あの娘のバグス・グルーヴ その①」 感想

 

今月もジョジョランズ感想書いてきます。これがあるから一か月頑張れるというものよ。今回の話は見どころまみれでかなり好きです。興奮のあまりいつもより長文になってしまった。

では、16話「あの娘のバグス・グルーヴ その①」の感想です。

 

今回の話のポイント

VS 体内のスタンド

前回から引き続き体内のスタンドとのバトル。

ジョディオはドラゴナに倒し方を伝授します。

それはドラゴナがスムース・オペレイターズで敵スタンドを右肺から引きずり出し、ジョディオが口からノーヴェンバー・レインの雨を入れて攻撃するというもの。

この作戦は無事成功。ドラゴナは一命を取り留めます。幼少期から一緒にいる二人だからこそ出来た見事なチームワーク!

 

しかしウサギの方はもうスタンドが脳へ入ってしまった。脳の中は複雑だから探せない。そこでジョディオは病院に向かってMRIを使うことを提案します。病巣の位置を特定できればスタンドの位置も分かると。

 

9部チームのスタンドは万能なものが無いので、工夫を凝らさないと勝てないのが面白いですね。まさか能力バトルでMRIという現実の医療技術を使うとは思わなんだ。

ここにもしハーミットパープルがいたら簡単にテレビに体内を映せちゃいますからね。一人一人の能力が弱い分スリリングな綱渡り的展開を楽しめる。

能力の制約が多くても面白い展開を描ける荒木先生は本当に凄いなあ...

スタンド使い登場!

場面は監視カメラの映像を見る人物たちに移ります。一際存在感を放っているのがボビー・ジーン捜査官というお爺さんと、「フラニャンダンサー」というフィギュアをやたら欲しがる女の子。

女の子はフィギュアを欲しいとごねまくったり警備員のお兄さんを見下した発言をしたりと、いかにも甘やかされて育ってそうな感じ。

しかし、監視カメラの映像からすぐにDEEDの原本に触れた三人(ドラゴナ、ウサギ、チャーミング・マン)を割り出し、スタンド使いであることも見抜くなど、実力は確かなようです。

そしてこの女の子こそが今ジョディオたちを襲っているスタンドの本体で、スタンド名はタイトルにもある「バグズ・グルーヴ」と判明。

元ネタは「Miles Davis」のアルバム「Bags Groove」。

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ボビー・ジーン捜査官の方は「Bruce Springsteen」の「Bobby Jean」という曲が元ネタ。

www.youtube.com

 

ボビー・ジーンは本来HOWLERの不正を追うべき捜査官という立場でありながら、HOWLERの不正に加勢する人間のようです。

正義側のはずの人間が悪事を行っている。これは1話のセクハラ警官や2話の嘘をついて証拠を押さえた警察官のお姉さんのように、度々描かれてきています。

ジョディオ達からしたら、正義を名乗り、自分たちを悪呼ばわりする人間たちが悪事を行っている状況。これが9部のテーマである「不条理」のひとつなんでしょうね。

MRIを求めて病院へ向かう一行

病院に到着した一行。ジョディオはMRIと間違えてICUのフロアに来てしまいます。

アルファベット大文字3文字を見分けるのは苦手だよとのこと。確かにチャーミング・マンの自己紹介の時に言ってたけど...お前さっきまでMRIってめちゃくちゃ言ってただろw

しかしそんなうっかりミスのおかげで、一行はHOWLERの土地獲得に大きく近づくことになります

ICUのフロアには、バグズ・グルーヴの被害に遭った登記所のお姉さんがいました。そしてその父親も。それぞれ名前は「ソフィ」と「ホワイト議員」。

ホワイト議員は自分がHOWLERの不正について調べていたから娘が毒を盛られたのだと確信。悲しみに暮れ、HOWLERの土地を差し押さえて不正を暴いてやろうとします。

差し押さえるための書類にサインを済ませ、あとは指紋認証をするだけ。しかし証拠不足なので踏ん切りもつかない…というところで響く電子音。ソフィの心肺が停止してしまったのです。書類を置いて駆け寄るホワイト議員。

それを見た一行は、溶岩が土地を引き付けている最中なのだと確信。指紋をスムース・オペレイターズで動かし、認証を完了します。

疑問点

ダメージフィードバック

自動追跡型スタンドはやられても本体にダメージが反映されないのが特徴のひとつなのですが、自動追跡型のはずのバグズ・グルーヴが一体やられた際、本体の女の子は鼻血を出していました。このスタンドは例外ってだけですかね。

HOWLERの土地不正とは?

HOWLERが土地を不正利用しているということは作中で繰り返し言われているのですが、具体的にどういった悪事を働いているのかはまだ分かってません。これはじきに明らかになるでしょう。

バグ「ス」・グルーヴ? バグ「ズ」・グルーヴ?

今回明らかになった体内のスタンドの名前。タイトルでは「バグ・グルーヴ」ですが、女の子は「バグ・グルーヴ」と呼んでいます。どっちが正しいんでしょうか。まあ大人しく次回を待ちましょう。

解消された疑問

THE MATTEKUDASAIのフェイク映像

THE MATTEKUDASAIが作るフェイク映像について。露伴邸での描写だと「『本物の映像』と『フェイクの映像』両方が残るので証拠としての能力を失う」というような能力に見えましたが、今回、カメラに変身しておけばフェイク映像の方しか残らないことが分かりました。

また、露伴邸の時とは違いフェイクの精度も上がっていました。(以前は少し髪型やアクセサリーが違う程度だったが、今回は全く別人に見えるレベルになった)

その他気になったこと

ジョディオの「兄さん」呼び

ジョディオが初めて仲間の前でドラゴナを「兄さん」と呼んでました。

今まではそういったことはなかったので、ややこしくならないように意識して呼び分けてるのかなと思ってたんですが、特にそういった配慮をしているわけではないようです。

ウサギは「兄さん」呼びに引っかからないのかな?告白までしたぐらいですし女性だと思ってそうですけど...

オータニさん登場

ホワイト議員の口から「オータニ」という名前が出ました。これは言わずもがな野球選手の大谷翔平のことでしょうね。こういう現実世界とリンクしてるような描写、好きよ。

 

ジョジョリオンでは「アー君」というマー君を意識したような野球選手が出ましたが、大谷翔平はそのまま。

まあ、アー君の方はロカカカを食べて顎が崩れ落ちるというショッキングなシーンがあるので名前をそのまま使うわけにはいきませんからね。

初めての死

スタンドに襲われた登記所のお姉さんがまさかの死亡。9部で人が死ぬのはこれが初めてです。

9部はそこはかとなく陽気な空気感があるとはいえやはりクライム・サスペンス。シビアな世界観であることを思い知らされました。

 

このお姉さんが死んだ直接的な原因はもちろんバグズ・グルーヴなわけですが、元はといえば一行が原本の閲覧をしなければ彼女は無事でいられたわけですよね。

つまり一般市民を間接的に殺してしまった、とも取れるわけで。不本意とはいえ人の生死に関わってしまった一行に何か心境の変化はあるのでしょうか。

今後の展開

今回のお話は最初から最後まで内容ぎっしりで面白かった。好きなページが多すぎる。

ジョースター兄弟の協力技、メインヴィランとなりそうなHOWLERの関係者の登場、そして最後の指紋を動かすスムース・オペレイターズを見守る5人の覚悟の決まった表情の格好良さ!

ドラゴナがウサギを「見捨てない」と言ってくれたのも良かった。まだまだ辛辣な扱いを受けがちなウサギだけど、徐々に信頼関係が築けているのが分かって嬉しい。

 

さてここからは考察。ここまで見た感じ、溶岩には物品を引き付ける時周囲の人間を不幸にするというルールがあるように思えます。20ドルの時はスプライトに蠅が入る、腕時計の時はレオ君が腕時計を紛失して彼女に振られる、そして今回は遂に死人が出てしまった。

ヴァレンタイン大統領が言及したように「良い事」と「害悪」はプラスマイナスゼロであって、溶岩を行使すればするほど、周囲の人間が相応の対価として犠牲になっていくのでしょう。

 

一行はその性質に気づいた後でも溶岩の使用を続けるのかな?

言動を見るに一般人を巻き込みたくないという情はあるように見えますが、いよいよとなれば他人を不幸にしてでも幸せを掴もうとしそうな感じもします。チャーミング・マン以外はみんなまだ20歳前の小僧ですし。

一行がどちらの選択をとるのか、そしてもし他人を不幸にする方を選んだ場合。ジョジョで「過程」を重視しなかった者は碌な目に遭わないので、彼らをどんな結末が待ち受けているのか。非常に気になります。

 

私の主観だと、ジョディオは悪に染まる予感がビンビンしてます。

理由は単純。ジョディオが最初から明確な悪として描かれているからです。

ファンの間では、ジョディオはよくジョルノと比較されます。確かに年齢が一致しますし、悪事に手を染めているところや雰囲気は似ています。

でも、この2人には決定的な違いがあります。それは、ジョルノは悪のガワを被った正義として描かれているのに対し、ジョディオは純粋な悪として描かれていること。

ジョルノは麻薬を青少年に流すギャングを討ち取るためにギャングになったのに対し、ジョディオは1話目から高校生相手に麻薬の売買を行っています。目的もジョルノのように殊勝なものではなく、終始「大富豪になる」「カニズムの頂点に立つ」ことです。

極めつけはジョディオという名前。ディオは一番の金持ちになるという目標を達成するために恩人を毒殺しようとするほど手段を選ばない男で、スピードワゴンも「生まれついての悪」と評した人物です。

ここまで見た感じ、ジョディオは明らかにジョルノではなくディオ寄りの人物として描かれていることが分かります。

今まで悪のポジションにいたディオと、似通った人格を持つ人物が主人公。そうなると、ジョディオは、ディオが心半ばで頓挫した「一番の金持ちになる」という目標、さらに言えばディエゴが達成できなかった「社会(ここではメカニズム)の頂点に立つ」という目標を代わりに遂行する人物であると考えるのが自然でしょう。

©「ジョジョの奇妙な冒険」コミックス1巻・「スティール・ボール・ラン」コミックス6巻より
ディオとディエゴ。二人の少年が届かなかった願いを叶えるのがジョディオというキャラクターなのではないか?

そう考えると、ジョディオが「大富豪になる」こと、「メカニズムの頂点に立つ」ということは絶対的条件となります。ということは自然と、他者を不幸にすることを承知で溶岩を使うということに。

しかし考えてみてください。ディオとディエゴが失敗した理由は何でしょうか。二人とも「過程を疎かにした」からです。ディオは自分の目標を達成したいがあまり、恩人を手にかけようとしました。ディエゴは聖なる遺体の力を目の前にして、「自分の母親が無関心な社会のせいで死亡した」という自分の原点とも言える出来事を水に流してしまいました。

この理論に当てはめると、単純に溶岩を使うだけではジョディオは決して幸せにはなれないでしょう。別の切り口が必要です。

何度も「これはひとりの少年が亜熱帯の島々で大富豪になっていく物語」と銘打っているあたり、大富豪の夢は諦めたけど幸せだよ~なんて結末は考えられません。

彼に残された選択肢は2つ。

 

① 溶岩を利用して大富豪にはなるが、同時に不幸にもなる

② 溶岩が呼び起こす不条理に決着をつけて、真面目に働いて大富豪となる

 

ハッピーエンドなのは②です。今のところ、「不条理」という言葉が出てきたのは「ドラゴナのいじめ」「チャーミング・マンが溶岩の見つかったフアラライ山で弟の捜索を妨害される」「登記所のお姉さんが主人公チームが溶岩を使った影響で死亡する」の3つ。3つ中2つが溶岩関連です。

そうなると、「溶岩を使うこと」=「不条理を他人におっかぶせること」と言い換えられます。「溶岩を大切にすれば『メカニズムの頂点に立てる』」=「他人に不条理を押し付けられる立場になる」とも言い換えられ、繋がります。

 

不条理を他人に押し付けるなんて過程を重視しない行動をとっていれば、確実に宿命が追い付いてきて、不幸になるでしょう。ならば、不条理の大本である溶岩を破壊して、真面目に働く。これがハッピーエンドの唯一のルートです。

 

とどのつまり、9部は「悪人は幸せになれるのか」というテーマです。

勧善懲悪の原則に則るなら、「それは無理」が答えです。

生まれついての悪であるジョディオは、「悪人は幸せになれないことを受け入れる」か、「幸せになりたいから、自分を捻じ曲げる」かのどちらかを選ばなくてはいけません。どちらも地獄の苦しみが待っていることでしょう。15歳の彼にはあまりに重すぎる選択です。

9部は明るい雰囲気に見えて、描こうとしているものはどの部よりも禁忌的でドス黒いものなのではないか。16話で初の死者を見て、そんなことを考えました。

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